大判例

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東京高等裁判所 平成元年(ネ)3011号 判決

主文

一  原判決中、控訴人らに関する部分を取り消す。

二  被控訴人らは、連帯して、控訴人ら各自に対し、別紙一認容額一覧表の各控訴人氏名欄に対応する合計欄記載の各金員並びに同表の内金額欄記載の各金員に対する被控訴人ベルギーダイヤモンド株式会社については昭和六〇年六月一四日から、被控訴人小城剛については同年七月一六日から各支払済みまでいずれも年五分の割合による金員を支払え。

三  被控訴人らのその余の各請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

五  この判決の第二項は仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

(主位的請求)

1 原判決中控訴人らに関する部分を取り消す。

2 被控訴人らは、連帯して、控訴人ら各自に対し、別紙二損害一覧表の各控訴人氏名欄に対応する合計欄記載の各金員並びにこれに対する被控訴人ベルギーダイヤモンド株式会社については昭和六〇年六月一四日から、被控訴人小城剛については同年七月一六日から各支払済みまでいずれも年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

4 仮執行の宣言

(予備的請求)

1 被控訴人ベルギーダイヤモンド株式会社は、控訴人ら各自に対し、別紙二損害一覧表の各控訴人氏名欄に対応するダイヤ購入金額欄記載の各金員を支払え。

2 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人ベルギーダイヤモンド株式会社の負担とする。

3 仮執行の宣言

二  被控訴人ら

1  本件各控訴をいずれも棄却する。

2  控訴人らの予備的請求をいずれも棄却する。

3  当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする。

第二  当事者の主張

次に付加、訂正、削除するほかは、原判決の事実摘示のとおりであるからこれを引用する。

一  原判決一丁裏八行目「請求原因」の前に「主位的」を加える。

二  同七丁表七行目の「並びに承継前原告亡松本哲雄」を削り、「同」を「承継前一審原告」に改める。

三  同七丁表末行の「承継前」から同丁裏初行の「相続し、」までを削り、同行の「承継前」の次に「一審」を加える。

四  同九丁表二行目の「請求額一覧表の請求額」を「損害一覧表の合計」に改める。

五  同九丁表五行目の次に改行の上、次のとおり加える。

「二 予備的請求原因

1  前記一5(一)、(二)に同じ

2  本件契約は、いわゆるマルチまがいの商法により締結せしめられたものである。

すなわち、マルチまがい商法は、①いずれも破綻して大多数の被害者を発生させる一方、同被害者らの犠牲の下にマルチ業者が莫大な利益を得て倒産することを経営者が当初から熟知していること、②間接利益を得られるシステムから射倖心を煽り、健全な勤労意欲を減退させること、③組織及びその意図が違法であるために必然的に違法な勧誘を行なうなどの特徴を有する。

右のような特徴を有するマルチまがい商法は公序良俗に違反し無効である。

3  よって、控訴人らは、被控訴人会社に対し、別紙二損害一覧表の各控訴人氏名欄に対応するダイヤ購入金額欄記載の各金員の支払を求める。」

六  同九丁表六行目冒頭の「二」を「三」に改め、「請求原因」の前に、「主位的」を加える。

七  同丁表一〇行目の次に改行の上、次のとおり加える。

「三 予備的請求原因に対する被控訴人会社の認否

予備的請求原因2は争う。」

八  同丁表末行冒頭の「三」を「四」に改める。

九  同一四丁表四行目の「購入代金の差額と」を「購入代金との差額」に改める。

第三  証拠関係<省略>

理由

一被控訴人らについて

1  主位的請求原因1記載の事実は当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実と証拠(<書証番号略>)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。

(一)  被控訴人会社は、豊田商事株式会社を中核とする企業グループを統括する地位にあった永野一男の発案により、ダイヤを主力とする宝石等を組織販売する会社として昭和五八年二月八日設立され(本店所在地大阪市南区)、右企業グループの中では豊田商事株式会社に代わる集金機構として位置づけられた。

被控訴人会社の株式は、当初は右企業グループによって、後に右企業グループを統括する銀河計画株式会社(代表者永野)によって保有され、資金面及び人的スタッフの面において同社の支配下に置かれた。このため、昭和六〇年六月永野が暴漢によって刺殺され、右企業グループが崩壊したことに伴い、そのころ被控訴人会社の経営も破綻した。

(二)  被控訴人小城剛は、昭和五六年一二月三一日、福岡通産局商工部アルコール第二課課長補佐の地位を最後に通産省を退職し、昭和五八年五月二日、被控訴人会社の代表取締役に就任した。被控訴人小城は、もと通産省に勤務していたという経歴を生かして被控訴人会社の対外的な業務、ことに通産省の地方出先機関に対する被控訴人会社の事業の説明等に従事し、同社を退職する時点では、交際費を含めて月額二〇〇万円の報酬を得ていた。

被控訴人小城は、被控訴人会社の経理部門には関与せず、代表者印も自ら保管することはなかったが、同社の営業については概略掌握していた。

二本件契約の締結について

主位的請求原因5記載の事実については、被控訴人らにおいて明らかに争わないからこれを自白したものとみなす。

三本件組織の違法性について

1  主位的請求原因2記載の事実は当事者間に争いがない。

右争いのない事実と証拠(<書証番号略>)及び弁論の全趣旨を総合すれば、原判決一五丁表二行目から一七丁表八行目までの事実が認められる。

2  次に、証拠(<書証番号略>)によれば、本件組織の仕組みは、かつてマルチ商法として世上屡々批判の対象となったホリデイ・マジック株式会社に勤務し、組織販売システムに知識と経験を有する平井康雄と藤原照久の両名が中心となって考案した新しい商品販売機構であり、昭和五八年三月頃、当時マルチ商法等を規制する措置として制定された無限連鎖講の防止に関する法律、訪問販売等に関する法律ないし独占禁止法等に形式的には抵触しないよう巧妙に工夫がなされていることが認められる。

3  証拠(<書証番号略>原審における証人柴田昌子及び同堺次夫並びに控訴人丸橋益子、当審における控訴人黛郁夫)及び弁論の全趣旨を総合すれば、被控訴人会社が控訴人らに販売したダイヤは、現在我が国で最も普及している鑑定評価方法とされている米国宝石学会の方式(いわゆる四Cの基準)によると、カラーグレード(色)やクラリテイグレード(透明度)は中等程度以上の真正なものであり、そして、日本宝石鑑定所又は東京宝石鑑別協会作成名義の鑑定書が添付されてはいるものの、宝石の重さを示すカラットが小さい(0.25から0.3カラット)ため、その処分価額は、被控訴人会社が控訴人らに販売した価額(三六万円から四五万円間で)の約一割程度にすぎないことが認められる。

4  証拠(<書証番号略>、原審における控訴人丸橋益子、当審における控訴人黛郁夫)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らの中でダイヤ自体が欲しくて、又は購入の必要性があって被控訴人会社からこれらを購入した者は皆無であること、控訴人らのダイヤ購入の主たる動機は、本件組織の会員資格を取得するためには、ダイヤの購入が必要条件とされているため、右条件を満たすためであったこと、控訴人らの中で、ダイヤを購入後装飾品等として使用している者はなく、全員が控訴人訴訟代理人安彦弁護士にダイヤを預託したまま現在に至っていることが認められる。

5  証拠(<書証番号略>、当審における証人松本恒雄)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人会社の行った本件商法は、マルチまがい商法としてマスコミや国会で取り上げられ、識者の批判を浴びたこと、本件商法について国民生活センターへ寄せられた相談の件数は昭和五八年度から平成二年度までの間で一一八八件に達したこと、本件商法については、警察が無限連鎖講の防止に関する法律違反の容疑で捜査をしたほか、大阪、名古屋、広島でも本件訴訟と同様の訴えが提起されていることが認められる。

6  以上の事実関係の下で本件組織が違法性を有するか否かについて判断する。

本件組織の特徴としては次の四点を挙げることができる。すなわち、

① 本件組織は、表向きは、会員にダイヤを販売することではあるが、右販売そのものに主眼があるのではなく、ダイヤを購入する会員を連鎖的に増殖させ、かつ、会員を媒介としてダイヤの販売を拡張していくことが本来の目的であること

会員に販売されるダイヤは、外形上被控訴人会社との間の売買の法形式をまとってはいるが、実質は組織加入への前提要件としての対価そのものである。何故なら、会員はダイヤが欲しくて組織に加入するのではなく、後記②の経済的利益の獲得が目当てであるからこそダイヤを購入するのであって、しかも、加入のために購入するダイヤの価額は、四〇万円前後であるが、通常平均人の金銭感覚からすればかなりの高額と評せざるを得ないこと(なお、組織加入者が、右金額に相当する商品を取得できればまだしも、すでに見たとおり、加入会員は市場交換価額の一割程度にとどまるダイヤが手元に残るにすぎない)。

② 本件組織に加入した会員は、第三者に対するダイヤの販売媒介に成功し、或いは第三者をあらたに本件組織に加入させれば、その対価として一定割合の経済的利益を受ける権利が与えられること

③ 勧誘されて入会した後続の加入者も、さらに第三者に対するダイヤの販売媒介に成功し、或いは第三者をあらたに組織へ加入させれば、②と同様の権利が与えられることにはなっているが、すべての加入者が②の経済的利益を収受することが可能となるためには、加入者が次々と連鎖化して増大していく必要があり、しかもこの連鎖が文字どおり無限に拡大されていくことによって、はじめて右利益収受が実現するという仕組みになっていること

④ その結果、新規加入者の無限の拡大が本件組織存立の不可欠の前提とされていること

等である。これをさらに敷衍するに、

第一に、本件組織は、新規加入者の無限拡大を組織存立の不可欠の前提条件とすることによって、いわば構造的な欠陥を内在させており、それ故に、自己破綻の招来が必然的であるという点に根本的な問題性を有している。それは、新規会員の加入拡大が実際上は困難であることに破綻の原因があるのではなく、加入が容易であればあるほど、すなわち加入会員が速やかに増大すればするほど破綻の現実化する時期も早まるというところに構造的な欠陥があるといえる。その意味で、本件組織は人間の空想の中においてしか成立しえないのである。

第二に、本件組織が破綻すると、それがいかなる段階においてであれ、ごく少数の上位者のみが経済的利益を獲得し、下位の圧倒的多数の者は自己の出捐した金員の額すら回収できない結果に終わることが当然に予定されている。したがって、このような組織への加入そのものが、どうしても射幸的ないし賭博的性格を帯びてくるのである(新規加入者のうち、相当の割合の者が、被控訴人らの宣伝するように収益を挙げている現実があるのならとも角、そのような事実は本件に顕われた証拠からは全く推認できない)。

第三に、本件組織を現実の社会において開設、運営していくためには、当該担当者らにおいて本件組織の右のような本質ないし問題点を明らかにすることなどできないどころか、却って隠蔽しなければならないから、必然的に善意の第三者に対して欺瞞的な勧誘活動を展開せざるを得なくなることである。

つまり、本件組織は、破綻が必然であり、会員の勧誘に努力すればするほど破綻に近づく、いわば「死の行軍」を組織化する仕組みであること及び各人の会員勧誘は、圧倒的多数の犠牲者の上にごく少数の者だけが利益を収受できる結果をもたらす射幸的な活動であることにその本質があるからである。したがって、これをありのまま被勧誘者一般に開示すれば、本件組織そのものがも早成り立たなくなることは見易い道理であり、本件組織が現実に機能するためには、どうしてもその本質をおおい隠すための欺瞞的な勧誘行為が不可避となるのである。

本件組織加入に際しての出捐は、前記のとおりダイヤの販売代金の支払という方式で行われるから、本件組織をもって無限連鎖講の防止に関する法律二条にいう「無限連鎖講」に当たると解することは法文上困難ではあるが、すでに見たところからすれば、本件組織の本質は、同法一条にいう、「終局において破たんすべき性質のものであるのにかかわらずいたずらに関係者の射倖心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るもの」と同視されるべきなのである。そうだとすれば、無限連鎖講については、これを開設し、運営することが法律で禁止され、刑罰の対象とされていることに鑑み、これと本質を同じくする本件組織についても、これを開設し、運営すること自体が社会的に違法な評価を免れ得ないものというべきである。

ところで、本件ダイヤの販売システムを考案し、開発した平井康雄は大要次のように述べている(<書証番号略>)。

被控訴人会社においてダイヤを購入することは、いわば出資の一方法である。出資者は組織の定めた方針に従って活動しなければ出資額を回収できないことは当然であるが、会社としては、ダイヤ購入者をさらに販売員に育成するという観点から一部の強者のみが生き残ればよいという考えを排斥し、投資した者が意欲的にいっそう活動できるようにするため、各種イベント・ショーないしパーティーの開催、ティーサロンの設営、或いは各地リゾート施設の割引利用のあっせん等を企画し、実践したというのである。

しかし、右陳述は、本件の組織的営業が破綻したあとで、自らの企画を美化したいわゆる自画自讃のきらいがある。また、平井のいうところの会員に対するサービスが名目以上にどの程度実践されたかも定かではないのみならず、同人らが現実に展開した組織営業活動の中心が、後記のとおり、目前の金銭的利益につられて知人の勧誘に応じた大衆に対し、不急不要の、しかもかなり高価な商品であるダイヤをどのようにしてできるだけ多数人に購入させるかにあったことは否定し得べくもないのである。

さらに、平井は、被控訴人会社としては、月約一万人の顧客を得られれば営業が成り立つこと、将来はこれを約三〇万人の会員を擁する組織体に育成することが目標であったこと、加えて、商品もダイヤ以外の化粧品のファッショングッズ等多品種に拡げていく方針であったともいう。

しかし、右のような顧客の拡大ないし商品の多様化による営業活動が、活溌化すればするほどその裏に多数の犠牲者の出ることも避けられないこと(平井らは、ことさら右現実に目を覆っているふしがある)は、既に述べたところからも明らかであることからすれば、平井らのいう右プランはやがては瓦壊の免れない単なる机上の空論の域を出なかったものといわざるを得ないのである。

被控訴人らは、さらに本件組織がピラミッド組織を形成するというだけで本件組織を違法ということはできず、本件商法の違法性は、具体的勧誘方法、商品価値、被害の有無等の各点によって判断されるべきものであり、現に、被控訴人会社が控訴人らに販売したダイヤには販売代金に相当する価値があったから、本件組織をもって金銭配当組織と同一に論ずることはできないし、控訴人らの手元には商品価値の十分あるダイヤが残る以上、経済的被害もないと主張するが、ダイヤの処分価額が購入代金の一割程度にすぎないこと、本件組織の加入者で自己の出捐額を回収できない者が多数輩出していることは前記認定のとおりであるから、被控訴人らの右主張は採用できない(勧誘方法の適否については後述する。)。

四勧誘方法の違法性について

本件組織が現実に機能するためには、欺瞞的な勧誘方法を展開せざるを得ないことは前叙のとおりであるが、証拠(<書証番号略>原審における証人柴田昌子及び同堺次夫並びに控訴人丸橋益子、当審における黛郁夫)及び弁論の全趣旨によれば、本件組織への勧誘方法はマニュアル化されており、その概要は次のとおりであると認められる。

1  被勧誘者(顧客)を新規に被控訴人会社へ誘う方法としては公衆電話が最適とされる。勧誘者は電話で、「すばらしいことを始めたので、あなたにだけ教えてあげる」とだけ述べて、話の内容や目的を一切告げずに面会の約束をとりつけ、被勧誘者を被控訴人会社のビューティフル・サークル(BC)と称する説明会場に同行する。

2  BC会場の多くは、市内有数のビル内のホールが利用され、音楽や照明で豪華な雰囲気がかもしだされるよう演出されている。そこで、被勧誘者は、先ずダイヤ及び被控訴人会社の広告映画を見せられ、その後会員フロアーで、トレーナーと称する会員と勧誘者から次のような説明を受ける。

ア  本件商法はマルチ商法でもネズミ講でもない合法的な商法であること。

イ  社長は通産省の出身であり、社会的信用のある人物であること。

ウ  被控訴人会社は急成長しており、将来株式上場予定であること。

エ  ダイヤには日本で最も信用のある機関の鑑定書と保証書がついているので、絶対安心であること。

オ  収入を得るにはダイヤを一つ買うだけでそれ以外に資本はいらない、ノルマもなく、リスクは全くない。少なくとも三人の知人をここに連れてくるだけでよい。説明は会社側が行う。一週間以内に三名を紹介して早くBDAになって短期間に高収入を得られるよう頑張ってもらいたい。BDAで収入一〇〇万円以上、BDMでは月収六〇〇万円以上になること。

3  トレーナーと勧誘者は、被勧誘者に対しその場でダイヤを購入するよう即決を求め、(手許不如意を理由に逃げようとする者にはクレジットの利用をすすめる。)、商品購入申込書に所要の記入をさせる。

4  ビジネス会員となることを希望する者は、引き続きビジネス教室に参加し、ビジネステキストを用いてトレーナーからビジネスに関する講習を受けた後、トレーナーの承認面接を受けるが、この際、参加意志再確認書、資格検定書及び誓約書を提出する。そして、面接で承認された者は、販売媒介委託契約書、ビジネス会員契約書に署名し、ビジネス会員の資格を取得する。

5  ダイヤの申込みから代金の支払までの間には数日の間隔があるが、勧誘者は、この間に被勧誘者が買受けの申込みを撤回しないよう頻繁に電話をかけて勧誘を続ける。

6  ビジネス会員になると、マネジメント・コンサルタント・クラス(MCC)という名称の研修を受講することを義務づけられているが、その受講費はビジネスビギナーズパックという教材費を含めて一万五〇〇〇円である。

MCCは、BC会場と同様の豪華な施設で催され、売上優秀者が拍手の中で表彰を受けたり、スポットライトの当てられた壇上で成功者が体験談を語るなどして熱狂的な雰囲気の中でビジネスへの動機づけ(いわゆる洗脳教育)が行われる。

同会場で説明される勧誘方法の特徴としては次の二点を挙げることができる。すなわち、

① 被勧誘者に勧誘の目的を一切告げずにBC会場に同行し、その場で四〇万円前後の高額なダイヤを購入させること、

② 右勧誘に当たり、被勧誘者に前叙のような本件組織の問題点や事後の新規勧誘における現実の困難性については一切告知がなされておらず、特異な成功例のみを用いて、あたかも簡単に、あるいは努力次第で誰でもが高額の収入を得られるかのように誤信させるような方法が講ぜられていること

である。

したがって、右勧誘方法は、第一に、独占禁止法二条九項に基づく昭和五七年六月一八日付け公正取引委員会告示一五号「不公正な取引方法」八項の「欺瞞的顧客誘引」に当たると考えられる。

第二に、本件商法は、昭和六三年法律第四三号による改正前の訪問販売法一一条の「連鎖販売取引」には該当しないが、改正後の同法一一条の連鎖販売取引には包含されるものと解される。そして、同法の趣旨は、連鎖販売取引を公正にし、購入者等が受けることのある損害発生の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護することを目的とするにあり、かつ、同法一二条の規制の精神が最大限に尊重されるべきであることからすると、被控訴人会社の本件勧誘方法は、同条の禁止する「連鎖販売取引の相手方の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げない行為」に該当し、実質的に同条の趣旨に抵触していたものといって差し支えない。

五本件商法の違法性(まとめ)

以上のとおり、本件組織を開設し、右組織が内蔵する矛盾を隠蔽するために必然的に欺瞞的な勧誘方法を用いてする本件商法は、全体として詐欺的な商法というほかなく、違法と評価すべきである。

六被控訴人らの責任

1  被控訴人会社は、違法な本件組織を開設して、控訴人らに対して本件商法を推進したことが明らかであるから、民法七〇九条により控訴人らが被った損害を賠償する責任がある。

2 被控訴人小城は、被控訴人会社の代表者印を保管せず、同社の経理部門には関与していなかったなど同社の実権を掌握していたとはいえないが、同社の代表取締役として同社の対外的な業務に従事し、かつ、すでに述べた同社の営業の基本的重要事項につ   き、その概略を把握していたと認められるから、本件商法を推進した者として、同様に民法七〇九条による責任を免れない。

七損害

1  財産的損害

控訴人らが別紙一損害一覧表記載のとおり、被控訴人会社からダイヤを購入し、同社との間で本件契約を締結したこと及び本件商法が違法であることは前叙のとおりであるから、控訴人らが本件商法により出捐を余儀なくされたダイヤの購入代金、MCCの受講料及び契約書の貼用印紙代はすべて被控訴人らの不法行為により被った損害と認められる。

2  慰謝料

本件商法の特質が知人、友人を巻き込んだ違法な勧誘行為にあることからすれば、本件商法の破綻により控訴人らが人間的信頼関係の破壊による精神的苦痛を受けたであろうことは推測に難くないが、右財産的損害の補てんによってもなお補てんすることができない精神的損害を被ったとまで認めるに足りる証拠はないから、控訴人らの慰謝料請求は失当として認められない。

3  損益相殺

控訴人らが被控訴人会社から購入したダイヤをいずれもその手元に保有していることは弁論の全趣旨により明らかであり、その処分価額が購入金額の約一割程度であることは前記認定のとおりであるから、控訴人ら各自の損害額からダイヤの購入金額の一割相当額を控除するのが相当である。

また、控訴人黛郁夫が第三者勧誘の対価として被控訴人会社から四万円の手数料の支払を受けたことは同控訴人の自陳するところであるから、同控訴人の損害額から右金額を控除することとする。

4  弁護士費用

本件事案の内容、審理の経過、認容額等を考慮すれば、弁護士費用は控訴人ら各自につきそれぞれ五万円とするのが相当である。

八まとめ

以上のとおりであるから、被控訴人らが控訴人ら各自に対し連帯して支払うべき損害賠償額は、別紙一認容額一覧表の合計額欄記載のとおりとなる。

九よって、これと結論を異にする原判決中控訴人らに関する部分を取り消し、控訴人らの各請求は右の限度で理由があるからこれらを認容し、その余は棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法九六条、九二条但書、九三条、八九条を、仮執行の宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山下薫 裁判官髙柳輝雄 裁判官豊田建夫)

別紙一

認容額一覧表

氏名

ダイヤ

購入金額

MCC

受講料

印紙代

小計

ダイヤ処分

価額相当額

手数料

内金額

弁護士費用

合計

1

黛郁夫

360,000

15,000

4,000

379,000

36,000

40,000

303,000

50,000

353,000

2

大日方將記

360,000

15,000

4,000

379,000

36,000

0

343,000

50,000

393,000

3

松本康雄

405,000

15,000

4,000

424,000

40,500

0

383,500

50,000

433,500

4

石井進

405,000

15,000

4,000

424,000

40,500

0

383,500

50,000

433,500

5

杉村由美子

435,000

15,000

4,000

454,000

43,500

0

410,500

50,000

460,500

6

寺田龍司

承継人寺田勢津子

450,000

15,000

4,000

469,000

45,000

0

424,000

50,000

474,000

7

御園生房子

405,000

15,000

4,000

424,000

40,500

0

383,500

50,000

433,500

8

井川代里子

420,000

15,000

4,000

439,000

42,000

0

397,000

50,000

447,000

9

丸橋益子

390,000

15,000

4,000

409,000

39,000

0

370,000

50,000

420,000

別紙二

損害一覧表

氏名

購入年月日

購入物

ダイヤ

購入金額

MCC

受講料

印紙代

小計

慰謝料

弁護士費用

合計

1

黛郁夫

60. 1. 4

指輪

360,000

15,000

4,000

379,000

50,000

100,000

529,000

2

大日方將記

60. 1. 11

指輪

360,000

15,000

4,000

379,000

50,000

100,000

529,000

3

松本康雄

60. 1. 4

裸石

405,000

15,000

4,000

424,000

50,000

100,000

574,000

4

石井進

60. 1. 4

裸石

405,000

15,000

4,000

424,000

50,000

100,000

574,000

5

杉村由美子

59. 12. 1

裸石

435,000

15,000

4,000

454,000

50,000

100,000

604,000

6

寺田龍司

承継人寺田勢津子

60. 2. 6

裸石

450,000

15,000

4,000

469,000

50,000

100,000

619,000

7

御園生房子

59. 5. 31

裸石

405,000

15,000

4,000

424,000

50,000

100,000

574,000

8

井川代里子

59. 11. 30

裸石

420,000

15,000

4,000

439,000

50,000

100,000

589,000

9

丸橋益子

60. 4. 6

指輪

390,000

15,000

4,000

409,000

50,000

100,000

559,000

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